このブログを検索

2013年11月14日木曜日

進路学習プログラムが定着するまで

ご縁があり首都圏にある中高一貫の女子校で、進路指導に関するお話を伺う機会に恵まれました。
その学校に関心を持った理由は、ホームページを拝見した際、進路学習プログラムのページが別にあったことです。
進路指導について書かれていない学校はないのですが、別のページにしているそのプログラムの内容はどのようなものか、という興味が湧きました。

明るい色のフローリングに吹き抜けからの光が差し込む、開放感のある校舎です。

現在の進路学習プログラムは中学3年から高校3年までを対象にしています。
今後、中学生から連続したプログラムにされる予定です。
中学3年では「働く」ということを考え、高校では関心のある分野別にクラスを超えたグループ学習を行う中で進路について考えるプログラムとなっています。

●なぜ進路学習プログラムを始めたのか
このプログラムの始められたA先生は、過去に担任をする中で、大学受験間際になって志望校を決めた生徒がいたことを話してくれました。
しかし、その生徒は、経済学部と商学部の違いなど事前に十分に調べることがなかったため、大学入学後に悩んだと言います。
そこで、まずA先生のクラスで一緒に本を読んだり、勉強会を開いたり、大学の先生を読んだりとする活動を始めたそうです。
当時の学年主任が、「失敗したら自分が責任をとるから」という後押しをしてくれたことにも感謝しているということでした。

●どのようにプログラムが定着したのか
A先生はこのプログラムを他の学年にも紹介していきます。
最初は、「こうした取り組みをしていますので、協力させてください。」という形で関わっていきます。
そうして成果を示すデータを集めていき、全体に広げていきます。
こうした地道な活動を続けることで、卒業生の多くが附属の大学に進んでいた時期を経験している年配教員との意識のズレや、「これをやって受験にどれだけ効果ある」という声、また「校務的にも負担である」という意見を克服していきます。

●どのようなプログラムなのか
こうして定着しはじめたプログラムは次のような流れとなっています。
まず、中学3年生ではベネッセの進路サポートの教材を用いて、夏休みにインタビューしたり、進路研究をします。また、卒業生や保護者の話をもとに、「働く」ということの苦労や喜びを感じ取り、これをレポートにします。

高校1年生の宿泊オリエンテーションで「進路を考えるとは」をテーマに考えます。
この時、夏のオープンキャンパス見学に関する宿題があります。
翌月には、その年に大学生になったばかりの卒業生やその保護者の話を聞く機会が設けられます。
進路の在り方や受験に関する話を聞き、夏休みに入る前に夏休み後のグループ学習に関するアンケートを取ります。
生徒は夏休み中にオープンスクールを見学し、レポートを書きます。

2学期から行うグループ学習では、夏休み前のアンケートに基づき、クラスの枠を超えて国際関係や医療・看護、工学・科学などのグループに分かれ、一緒に本を読むなどの勉強会を行います。ロングホームルームの時間などを8コマを使います。
各グループには学年の先生がそれぞれつきます。

さらに、成績推移にみる大学進学実績や大学入試の実務的な情報が掲載された「進学ハンドブック」の発行や大学模擬講義が続きます。
部外秘の教師用資料では、それぞれの場面で教師が使える資料やフォーマットが実に細かにまとめられており、誰もが一定水準の指導ができるようになっています。

生徒はこうした進路学習プログラムを経て、高2で教科選択を行い、さらに絞り込んだプログラムに入り、高3になると具体的な小論文対策や出願大学対策に移ります。

●プログラムの背景にあるルーブリック(段階的・領域別の生徒育成目標)
こうしたグループでの進路学習は、福岡県立城南高校のドリカムの事例にもありますように、生徒の進路意識を高める効果があります。
ただ、今回のお話では、生徒のグループ学習が学年教師間の協働の機会になっていること、一人の先生の熱意と地道な努力が学校全体を変え一つのものを創りだしたこと、という点が印象的でした。

その協働の発端となったのが、各学年で到達すべき「学ぶ力」を示すルーブリック作りです。
中1、中2と学年が縦に並び、「学び」「キャリア」「進路」が横に並んだ表には、各学年で目指すべき生徒の状態が記載されています。
それは、数年前に学校調査を行い学校全体の見直しが図られた際に、中心的課題として「応用力」が挙げられ、その養成部会が結成されたことに端を発します。
中3、高3でどこまでもっていくかという育成計画を、学力だけでなく討議した結果がこのルーブリックとなりました。
このルーブリックがあるからこそ、進路学習プログラムを学校全体で進めることができ、またそのプログラムを評価し修正することができるということでした。

●感想
お話を伺ったA先生は、世界史という学問を通じて物事を批判的に見つつ、一歩一歩事実を構築していくというスタイルを持っていらっしゃるという印象でした。
その特性を生かし、「どのような生徒を育成したいのか」「そのためにどのようにすれば良いのか」をロジカルに考えるだけでなく、
様々な人に粘り強くかかわり続けながら、一つのプログラムを作っていかれました。形だけでなく、そうしたプロセスを経たプログラムだからこそ、
ホームページのテキストから何か伝わるものを感じたような気がします。ありがとうございました。

0 件のコメント: